陸路の国境越え
だいぶ前の話。
アメリカからメキシコでバスで国境を越えるとき。
バスでアメリカ側のイミグレに着いた時、バスの中に係の人が乗って来て乗客のパスポートを確認していた。僕以外はみんなメキシコ人らしかったので、みんなはパスポートを確認されたあと、すっと降りていった。
で係の人が僕のパスポートを見て「これ預かるから」みたいなこと言って先に降りていった。
まあどうせ国境を越える際に通るしそこで受け取るもんだろうと思っていたから、特に疑うこともなくパスポートを渡した。
バスを降りて建物の中に入り、どこでチェックされるんだろうなって思いながらそのまま進んで行ったら出口まで来てしまった。おかしいなーって思って戻ってそこらへんの職員の人に「パスポート預けた人がどっか行ったからパスポート返してもらってないんだけど」って言ったら、別の部屋に案内された。
その部屋には他にも何人かいて、見るからに密入国しそうな人たちばかりだった。(見た目で判断してごめんなさい)
僕もその中の一人、言ってしまえば国境でパスポートを持っていない身元のわからない不審者だ。とりあえず待つように言われて、ちょっと立ち上がろうもんなら「座りなさい」ってすぐに言われるし、トイレも許可を得て一緒に職員がついてきてもらわないといけないし、携帯もさわれないし、ただ座って待つしかなかった。
このままパスポートが見つからなかったら僕はどうなるんだろう。
そんなこと考えながら1時間くらいは待っただろうか。
時計もなかったし、実際どれぐらい待ったかわからないけれど。
ついに彼らがパスポートを見つけて持ってきてくれた。
はぁーー。安堵のため息が漏れる。
でも体感時間は2時間くらい。どれくらい待つかわからないことほどストレスフルなことはない。
バスはメキシコの先の町までいくはずだったけどもちろん置いていかれたし、出口のすぐそこにあったバスの運転手にそのバスに乗せてって言ったけど、チケットがないとダメって言われて、でも粘って現金を渡してなんとか乗れた。
結局本当はどうすればよかったのだろう。僕がパスポートを渡した人は確かに制服を着た職員の人だったはずだ。もう数年前のことなのでうろ覚えだが。
パスポートは決して肌身離さず持っていること。
それが今回の教訓だ。
それ以来陸路の国境越えはいつも緊張する。
今まで旅中そんなに危ない目には遭ったことはないけど、わりとピンチだと感じた事件の一つだ。